~ にしおか すみこ ~
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朝は、
まだ静かでした。
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空は少しずつ明るくなり、
夜の名残をまとった霧が、
草原をゆっくりと流れています。
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鳥たちも、
まだ一日の始まりを急ぐことなく、
風だけが、そっと景色を揺らしていました。
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その中を、
一本の小さな川が流れています。
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急ぐこともなく。
止まることもなく。
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ただ、
今日も静かに。
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川の水をのぞき込むと、
澄んだ水面には、
空の色が映っていました。
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近づけば、
小さな石が見えます。
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その石の間を、
水は音もなく通り過ぎていきます。
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何かを押し流すのではなく、
何かを連れていくのでもなく、
ただ、
そこを流れているだけでした。
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歩き続けるうちに、
不思議なことに気づきます。
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景色は、
ほとんど変わっていません。
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それなのに、
さっきまで胸の中にあった小さなざわめきだけが、
少しずつ静かになっていました。
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風景は、
何もしていません。
何も語っていません。
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けれど、
そこにいるだけで、
心が澄んでいくような時間があります。
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朝霧は、
いつの間にか消えていました。
光は少しだけ強くなり、
草は風に揺れ、
小川は変わらず流れています。
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世界は何も変わっていないようで、
ほんの少しだけ、
明るく見えました。
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それは、
景色が変わったのではなく、
自分の心が、
少し澄んだからなのかもしれません。
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名前には、
音があります。
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その音は、
言葉になる前の空気を運びます。
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「にしおか すみこ」
その響きから私が思い浮かべたのは、
何かを教えてくれる風景ではなく、
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何も言わず、
ただ静かに寄り添ってくれる小さな川辺でした。
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澄んだ水は、
自分が澄んでいることを語りません。
朝日は、
自分が美しいとは言いません。
それでも、
その景色の中に立つと、
心の奥で、
何かが少しだけ整っていく。
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そんな朝があります。
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あなたには、
どんな風景に見えましたか。